KIB: kurogane in black

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それは無理、いろいろと無理

最近、話題になっている韓国のジャーナリズムに関して、しばらくいろいろと調べていた内容がようやくまとまりました。

たまたま米本さんがつい先ほど投稿したコメントがちょうど投稿のきっかけになっているので、そこから引用することにしよう。まず、米本さんが自分の記事のコメントで加油さんに次のように問いかけている。

<以下、引用開始>
時事ジャ-ナルには前科がある。すでに紹介したが、事件は同誌内で総活されたことはあるのだろうか。なければ金で転ぶ雑誌と言われてもしかたがない。
 小生は韓国の媒体事情は全く知らない。加油よ、教えてくれ。
<以上、引用終了>

加油さんがこの問いかけに答えられるかどうか、現時点では分からない。

が、私が分かる範囲=ネットで調べられて提示できる範囲でちょっと記しておくこととしたい。

※以下のリンクには韓国語のものもあります。お手数ですが、必要ならグーグル翻訳などをご利用ください。
重要だと思った箇所は、抜粋して翻訳している場合があります。


まず、サムスン事件について、ウィキペディアには書いていないが、時事ジャーナルから独立した時事INなどを見ると、この事件のせいで時事ジャーナルは韓国記者協会から除名処分を下されている。

時事IN 略歴
2007年7月24日、韓国記者協会、時事ジャーナルを除名処分

記者協会、時事ジャーナルを除名処分決定、経営陣の編集権侵害を事由に


この前後の件は、さすがに時事ジャーナルは何もわかりませんが、記事削除を受けた側が作った時事IN側の略歴を見るに、労働組合がストライキをしたり、激しいやりとりがあった模様です。しかし、その間も雑誌を出し続けていたのは、ちょっと驚愕に値します。
(この点は、余裕があれば後述します。)

韓国記者協会で時事ジャーナルを検索した結果、このときのサムスン事件で懲戒処分を下された記者が訴訟を起こし、それが最高裁判所まで行って記者が勝訴した模様です。
これが2012年9月27日の記事。

この後、記者協会の除名が解除されたかどうかは、若干不明です。
ただし、現在の韓国記者協会のメンバーリストには時事ジャーナルの記者の名前もあります。
支会長のソウル市の欄に시사저널 송창섭の名前あり。


また、上で除名処分についての記事を公開しているMedia Todayが、2016年6月26日に、
時事ジャーナル事件から10年、偽物のイメージは脱したが」という記事を投稿しています。

これを見ると、

・2006年のサムスン事件の結果、時事ジャーナルは偽物のイメージがついた
・しかし、メディアとしては特ダネを拾い、他社も驚く取材力などから、
 一般の読者やジャーナリストの間でも一目は置かれるようになってきている。
 (カネを払って読むなら時事ジャーナル、という読者のインタビューを上げている。)
・このようなイメージの改善は、芯のある記事のためで、
 2011年に時事ジャーナルから独立した時事INと時事ジャーナルが、同じネタの記事を特ダネとして
 スクープした時も記者協会の中でも最も権威がある記者協会賞は時事ジャーナルが受賞した。

ということで、経営陣のために時事ジャーナル自体は大変な境遇を通過したようですが、今はかなり改善されてきたように見えます。

しかし、この記事の最期のほうに、とんでもない爆弾が潜んでいた。
これ、やばいんじゃないのか?

<引用および翻訳開始> 翻訳は基本、グーグル翻訳。ただし、明らかに誤訳は修正しています。
아이러니한 부분은 사태 이후 이미지 개선과 시사저널 내부의 문제 모두 ‘사주’로부터 비롯된다는 점이다. 사주가 어느 정도의 자본을 가진 탓에 경제지들과는 달리 기사와 광고를 바꿔먹는 일이 일상적이지 않으며 또 일선 취재기자들에게 그 부담을 과하게 주지 않는다는 것이다. 

실제 시사저널은 시사저널 사태 이전에도 노조가 없었지만 경영과 편집의 분리가 비교적 잘 유지됐다. 시사저널이 서울문화사에 인수된 건 1999년이다. 지금도 시사저널은 사주의 이해관계에 심각하게 어긋나지 않는 수준의 기사라면 자유롭게 발행될 수 있는 것으로 볼 수 있다. 

皮肉な部分は、事態の後、イメージの改善と時事ジャーナルの内部の問題の両方が「社主」から始まるという点だ。社主がある程度の資本があるため、他の経済紙とは異なり、記事と広告をバーターとすることが日常的でない。また現場の取材記者にその負担を過度に与えない。

実際時事ジャーナルは時事ジャーナル事態以前にも労組がなかった経営と編集の分離が比較的よく維持された。時事ジャーナルがソウル文化社に買収されたのは1999年である。今、時事ジャーナルは社主の利害関係に深刻に反しないレベルの記事であれば、自由に発行することができるものと見ることができる。

또 하나 짚고 넘어가야 하는 점은 시사저널 사태가 있었던 10년 전과 지금의 언론 환경의 변화다. 2006년 시사저널 사태는 경제권력이 언론의 편집권을 침해한 대표적인 사례로 꼽혔지만 2016년 현재는 광고주가 언론사 편집권을 침해하는 일은 흔한 일이 돼버렸다.  

김서중 성공회대 신문방송학과 교수는 “과거 시사저널은 독특할 정도로 독립적이고 자립적이었던 편집국이었다”고 전한 뒤 “시사저널 사태 이후 언론사들이 광고주들의 눈치를 더 많이 볼 수밖에 없는 환경이 만들어졌다. 광고주가 언론을 통제하는 방식 역시 굉장히 정교해졌다”며 시사저널사태는 반복되고 이상할 것 없는 언론환경을 꼬집었다.

시사저널 사태 이후 10년. 시사저널의 이미지는 더 이상 ‘짝퉁’이 아니다. 그럼에도 이면을 돌아보면 씁쓸하다. ‘원죄’에서 벗어나 과거 시사저널의 영광을 되찾기 위해 내부에서 고군분투 하는 기자들은 여전히 열악한 노동환경에 시달리고 있고, 노동자로서 제 목소리를 내기 어렵다. 시사저널 사태 이후 10년, 한국 언론의 환경이 모두 ‘짝퉁’이 되어버린 탓일지도 모른다.

もう一つ考察する必要点は時事ジャーナル事態があった10年前と今のマスコミ環境の変化だ。 2006年時事ジャーナル事態は、経済力がマスコミの編集権を侵害した代表的な事例として挙げられたが、2016年現在では、広告主がメディア編集権を侵害することは一般的なことになってしまった

ギムソジュン聖公会大新聞放送学科教授は「過去時事ジャーナルは、ユニークなほど独立し、自立的であった編集局だった」と伝えた後、「時事ジャーナル事態以後報道機関が広告主の顔色をもっと見るしかない環境が作られた。広告主がメディアを制御する方式もとても洗練されるようになった」と時事ジャーナル事態は繰り返され、(それが)異常なことではないメディア環境を批判した

時事ジャーナル事態以後10年。時事ジャーナルのイメージは、もはや「偽物」ではない。それでも場合を振り返ってみると苦々しい。 「原罪」から脱し、過去時事ジャーナルの栄光を取り戻すために、内部で苦労する記者はまだ劣悪な労働環境に苦しんでおり、労働者として発言するのは難しい。時事ジャーナル事態から10年、韓国メディアの環境がすべて「偽物」になってしまったせいかもしれない。
<引用および翻訳終了:強調は管理人>


注目してもらいたいのは、ソウル文化社の利益に反しないのであれば、自由に記事が書ける=ソウル文化社と利益相反があるのであれば、記事は書けない⇒ソウル文化社の利害に沿うような記事を書くことがある、とも読める点。

さらに、時事ジャーナルのときは特殊な事例として取り上げられたけれども、今は企業側も巧妙になり、時事ジャーナルだけでなくて韓国のマスコミ全体がそのような環境になっているのではないか?ということです。

実際、英語版の記事でもこのようなものがあります。2017年8月の記事です。

<英文記事から引用開始>
The messages sent in August 2016 to Samsung’s former top lobbyist Jang Chung-gi were first published by media outlets Sisain and Media Today in July and August. They include numerous requests for favours made by media executives and journalists, sent while he was deputy chief of Samsung’s group corporate strategy office. They paint an unambiguous picture of the power dynamic at play, with meticulous use of Korean honorifics and a strikingly deferential tone.
<英文記事から引用終了>


結果、米本さんの質問である、時事ジャーナルが、サムスン事件を総括したかどうか、韓国記者協会が除名処分をどのように処理したのかを把握することは出来ませんでした。

しかし、このMedia Todayの記事をみる限り、時事ジャーナルの総括どころか、それ以上に深刻な状況になっているかもしれない、ということを示唆しているのではないか?

それなら、時事ジャーナルが今回の記事でカネをもらったかもしれない、というのは疑惑のレベルを超えているように思うのだけれども、どうでしょう?


これでは、まともなジャーナリズムを期待するのは・・・それは無理 なぜ無理なの?



さて。一曲、聴いていただいて気分転換したところで、補足を。

上で述べた、時事ジャーナルがサムスン事件(事態)の後もずっと雑誌を出し続けていたことについて、参考までに触れておくことにします。
時事ジャーナルは1989年の創刊だそうだが、バックナンバーのリストは提供されている

2006年をクリックするとこんな感じとなっている。ここを見ると明らかだが、2006年6月のサムスン事件以後も、途切れなく雑誌が発刊されていることが分かる。

韓国記者協会から除名処分が下された2007年においても同じである。

何人もの記者がストを起したり、挙句の果てに独立して時事INを創刊してしまい、韓国記者協会から除名されていた時期でも、雑誌だけは出し続けたとは、恐れ入る。

航空会社なんかがたまにストしたりしているけれども、せいぜい2週間も続かない。それでも管理職が現場に出たりして大変だと思うが、そんなレベルをはるかに超えて、かなりの長い期間にわたってひどい状況だったにもかかわらず、だ。


さて、オンラインをよく見てみると、2018年のものは、それぞれのバックナンバーの表紙をクリックすると、それぞれの号で取り上げた記事が、これはどうもすべて公開されていて読めるようだ。

問題の統一教会がカバーストーリーとなっている2018年3月26日号は、一見、書評やスポーツの記事ばかりで、かつゴルフの選手の写真ばかりが目立つ。しかし、その下にある「More」のボタンを押して下にスクロールし、また「More」を押して、とやっていくと、カバーストーリーまですべて公開されている。

たとえば、こちらは「母親がいるのに、他の女性と父親の霊魂結婚式…統一教2世達の逸脱」
記事の下の方には関連記事もリンクがある。
統一教会の記事については、ここではおいておくことにしよう。


さて、このバックナンバー検索であるが、改めて確認すると、1989年の創刊以来のバックナンバーのカバーだけはすべて見ることが出来る。たとえば、創刊した1989年のはこんな感じ

イ・フェチャンの顔が懐かしい。上述した通り、この創刊当時あたりのバックナンバーをクリックしても何もでてこない。さすがに今とはシステムも異なっており、すべてウェブに公開できるようにはなっていないのだろう。

ということで、いつぐらいまでたどれるのか調べてみた。どうも2015年8月ぐらいから過去記事の公開をしているらしい。この辺に境界がありそうで、ちょっと以下に列挙してみる


2015年号数   :過去記事の公開状況

8月16日号:一つだけ 

8月23日号:ゼロ  

8月30日号:公開  

9月4日号:ゼロ  

※ 8月30日の日付がついているものと9月4日の日付がついているものは、カバー写真が同じ。
   なぜこうなっているかは不明。かつ、リスト番号のナンバリングが、ここから2000番台に増えた。

9月7日号:ゼロ  

9月14日号:公開 

9月21日号:公開 


以後、過去記事は公開、となっている。

このため、例のサムスン関連記事削除問題があった2006年のものは、記事が確認できない。
韓国の図書館にでも行ってバックナンバーでも調べれば分かるのだろうが、それをするほどカネも暇も持てあましているわけではないので。

参考までに2006年のバックナンバーはこんな感じ

韓国の時事ジャーナルが「サムスン関連記事削除問題」を起したのは、2006年6月のことだ。

「6月15日 、サムスングループ側から電話依頼を受け、時事ジャーナル社長クム・チャンテがサムスン関連記事の撤回を指示。イ・ユンサム編集長(当時)ら編集部は拒否。するとクム社長は、直接印刷所に掛け合って記事を削除、サムスンの広告に差し替えさせた。」

と書かれているので、6月15日前後のバックナンバーを見ると、

2006年6月6日号:No. 867
2006年6月13日号:No. 868
2006年6月20日号:No. 869 ※2006年6月10日とされているのは、タイプミスだろうと思う。
2006年6月27日号:No. 870


2006年6月9日~7月9日までのドイツでのワールドカップの時期とも重なっており、カバーもそれに関連したものが多い。

しかし表紙だけなので、印刷で差し替えたのが何かは、これではわからない。


ああ、もう一つ思い出したけれども、2018年のバックナンバーの表紙だけ見ても、文家のことが書かれている号以外はどれも、一般人である日本人から見ても重要性が理解できるものばかりだ
しかし、文家の写真入りの号は浮いてるよなー。

ちなみに、RADONに関しては、楽韓Webさんで取り上げられていたのが、まさしく時事ジャーナルの記事からのものでした。


部外者で、今は韓国に住んでいない人間がネットで調べてもこれくらいは分かりました。
現在の韓国にさぞかし詳しいであろう、加油さんには、さらに深い内容を期待することにしよう。

でも、ま、韓国の言論人が書いた記事で、今は時事ジャーナルだけでなく、韓国の言論界全体がサムスン事件の時よりはるかに悪い、とされているのであれば、今回、時事ジャーナルがカネで転んで記事書いたわけではない、ということを主張するのは、かなり厳しいと思いますけどね。